Overview
植物の肖像とは?
植物分類学者・牧野富太郎博士は、
94年の生涯で約40万枚もの植物標本を収集しました。
「牧野標本」と呼ばれるこれらの標本類の中でも、
博士が自ら作成した標本は100年以上を経た今も生命感を宿し、
研究資料としての価値とともに博士が植物研究にささげた情熱を伝えています。
写真家・菅原一剛は「牧野標本」の生命感と独自の美しさに感銘を受け、
標本となった植物一点一点の「肖像写真」を撮影しました。
本展は本来、科学的資料である「牧野標本」を、
アートとサイエンスふたつの視点から紐解く初の試みです。
ART(さくら色)とSCIENCE(みどり色)をテーマにしたそれぞれの空間で
「牧野標本」の深淵にふれる時間が流れます。
ROOM 1さくら色
高知県立牧野植物園が所蔵する牧野標本は約5,500枚。その中から博士の研究フィールドの広さが伺える41枚が厳選され、世界最高水準の1億5千万画素のデジタルカメラと技術を駆使して撮影されました。肖像写真を撮るように真っ直ぐに光をあてて撮影したことで、植物の微細な陰影が立体的に映し出された「新たなボタニカルアート」ともいえる標本写真の十数点をお楽しみいただけます。ROOM1では桜を愛した博士の庭に植えられていた「センダイヨシノ」を、拡大プリントと高精細なピンクプラチナプリントで展示。さらに、本展示に際して特別に100×150cmに拡大された「植物の肖像」では、博士が顕微鏡を通して見ていたであろう葉脈まで精細に見ることができ、植物のミクロの世界を体感いただけます。
ROOM 2みどり色
牧野富太郎博士は標本をつくる際、多くの個体を観察し典型ないしは標準的であるかを徹底的に吟味したといわれ、採集した植物はその日のうちに新聞紙にのせ、標本にするために形を整えていました。「牧野標本」の特徴は、植物学的な的確さと情報の集約にあります。博士にとって標本がなくてはならない資料であったと同時に、植物のすがたを余すところなく永遠に残そうとした真摯さの結実であったとも見てとれます。ROOM2では個々の植物のプロフィールとともに、被写体となった牧野標本と貴重な資料などを特別展示。さらに現在牧野植物園のある五台山で博士が採集した「ビロードムラサキ」の標本から、時代や場所を超えて受け継がれていく植物標本の奥深さをご紹介します。また、標本を通じたロシアの植物学者・マキシモヴィッチ博士との交流や、妻の名前を冠した「スエコザサ」発見のサイドストーリーなどもご覧いただけます。
Message
高知県立牧野植物園の牧野富太郎記念館本館1階に、標本を保管する部屋がある。そこでぼくは、貴重な「牧野標本」を拝見する機会を得た。牧野博士が手がけた標本は、明らかに他の標本とは異なる美しさがあった。いずれも百年ほど前に制作されたもので当然枯れてはいるのだが、ぼくの目にはとても活き活きとしたすがたとして映った。ぼくはこれらの標本を、写真を撮ることでもう一度甦らせたいと考えた。
標本の撮影は、通常であれば研究資料として複写されることが多いが、ぼくは今回、標本の一つひとつを肖像写真として撮影したいと考え、写真館で撮影するように真っ直ぐに光を当て陰影が出るように撮影した。そして、標本を固定するラミントンテープやラベルを修正処理を施して取り除いた結果、浮かび上がってきたのは、活き活きとした植物のすがたそのもの。まさに「植物の肖像(ポートレイト )」だった。
中でも、博士が生涯愛したさくらの花は、日本人にとって特別に愛着を感じる花であり、どこか心が穏やかに躍る、光そのもののようなあたたかさがある。そして、博士の生誕160年であった2022年4月24日、博士が採取した「センダイヨシノ」のさくら色の標本写真で「高知新聞」をラッピングして、平和を願って、穏やかな日常を願って、博士のメッセージと共におよそ16万世帯の購読者たちにお届けした。
牧野標本は、ぼくの目にはただの標本ではなく、慈しむべき植物のいのちそのものとして映っていた。するとやがて、目の前にある100年前の植物標本たちの中からみどり色が甦ってきた。そしていつの日かこの世界が、こんなみどり色とさくら色で埋め尽くされる日が来たとしたら、その時にはとても大きな幸福感と安心感を得るのではないだろうかと強く感じていた。もしかしたら植物たちは、人間そのものすがたなのかもしれない。
そして、牧野博士の植物標本は、その美しさをもって、そのことを教えてくれているように思えてならない。
Profile
高知県高岡郡佐川町生まれ。自然豊かな土佐の風土の中、幼い頃より植物を共として育つ。10代で漢学、英語、地理、天文学などあらゆる学問を学んだのち、小学校を2年で自主退学。22歳で上京し、東京大学理学部植物学教室に出入りをゆるされるなど、学歴を超えた独自の活動で黎明期の日本の植物学を押し上げた。1953年東京都名誉都民。1957年文化勲章受賞。
大阪芸術大学芸術学部写真学科卒。早崎治氏に師事後、フランスにて写真家として活動を開始。数々の個展を開催するほか映画の撮影監督も手掛ける。2005年アニメ『蟲師』のOP・EDディレクターを務める。2023年青森県立美術館にて個展「発光」を開催。同年2月『MAKINO 植物の肖像』(北隆館)刊行。日本赤十字社永年カメラマン。大阪芸術大学客員教授。
高知市生まれ。武蔵野美術大学造形学部卒。ディスプレイ会社勤務を経て友人とデザイン事務所を設立。1999年からは自身が展示デザインを手掛けた高知県立牧野植物園で学芸職員として勤務し、数々の企画展を通じて牧野富太郎の業績や魅力を伝えた。退職後の2017年9月、妻と「里見デザイン室」を開室。さまざまな展示デザイン、新聞連載の挿絵、イラストレーションなどを手がけている。
Takaoka-gun, Kochi Pref. Nov. 1891
Collection of The Kochi Prefectural Makino Botanical Garden
News
Event Information
2023年7月16日(日)15:00〜16:00
写真家・菅原一剛、展示デザイナー・里見和彦、キュレーター・太田菜穂子
会場 :展示館 企画展示室
定員 :15名
※参加無料(別途入園料必要)
※当日14:50から会場入口にて受付開始(先着順)。
2023年8月5日(土)10:00〜12:00
講師 :牧野植物園 職員
会場 :本館 アトリエ実習室・園地
定員 :10名
対象 :小学生
※参加無料(別途入園料必要)
※事前予約制
2023年8月6日(日)9:30〜14:00
講師 :写真家・菅原一剛
会場 :本館 映像ホール・園地 ※集合場所:本館 映像ホール
定員 :20名
2023年8月23日(水)
【二部制】①10:00〜12:00 ②13:30〜15:30
講師 :Watanabe’s 藍師、染師 渡邉健太
会場 :本館 アトリエ実習室
定員 :20名
参加費:3,300円(税込)※別途入場料
お問い合せ先:
MAKINO Botanical Art Project事務局
電話 03-5829-4956
mail info@makinobobapj.com
※お申し込みページが開きます。そちらからお申し込みください。
植物に感謝しなさい。
植物がなければ人間は生きられません。
植物を愛すれば、
世界中から争いがなくなるでしょう。
Let’s thank our flowers and plants.
We, people can’t live without plants.
In the hearts of loving plants,
No war in the world.
Goods
Coming soon…
MAKINO Botanical Art Project
牧野富太郎博士の生誕160年である2022年4月24日の朝、さくら色の「センダイヨシノ」の標本写真が高知新聞を包み、約16万世帯に配布され大きな反響を呼びました。菅原一剛が撮影した牧野博士の標本写真を通して、平和を願うメッセージを国内外に伝えています。
MAKINO Botanical Art Project 関連サイト
https://linktr.ee/makinobotanicalartproject
開催概要
- 展示会名
- 菅原一剛「MAKINO 植物の肖像」展
- 会期
- 2023年7月15日(土)~10月1日(日)
- 会場
- 高知県立牧野植物園 牧野富太郎記念館 展示館 企画展示室・植物画ギャラリー
- 開園時間
- 9:00〜17:00(最終入園16:30)
- 休園日
- 年末年始(12月27日〜1月1日)※メンテナンス休園あり
- 入園料
-
●一般730円(高校生以下無料)、団体630円(20名以上)
●年間入園券2,930円(1年間有効のフリーパス)※身体障がい者手帳・精神障がい者保健福祉手帳・療養手帳・戦傷病者手帳・被爆者健康手帳所持者と介護者1名および高知市・高知県長寿手帳保持者は無料。※車いす・ベビーカー貸出無料。●以下のクレジットカード、電子マネーをご利用いただけます。
JCB、VISA、mastercard、AMERICAN EXPRESS、Suica、PASMO、QUICPay、楽天Edy、WAON、nanaco、ID、UnionPay銀聯
- 共催
- MAKINO Botanical Art Project、 公益財団法人高知県牧野記念財団
- 特別協力
- 高知新聞社
- 協力
- 高知県、東京都立大学 牧野標本館、里見デザイン室
- 後援
- 株式会社北隆館
- 協賛
- 株式会社トリプルクラウンズ 、株式会社大洋印刷、株式会社青南商事
- Special
thanks - 高知新聞社 竹内一
ザ・プリンツ 久保元幸
トレトレ株式会社 竹内太郎
株式会社宮本スパイス 宮本哲明
株式会社Watanabe’s 渡邉健太
株式会社マテック
リコーイメージング株式会社
アクセス
〒781-8125 高知県高知市五台山4200-6
Googlemap ↗︎
JR高知駅から
JR高知駅南口とさてらす発MY遊バスで約30分
お車の場合
はりまや橋から車で約20分
高知自動車道「高知IC」から一般道で約20分
高知自動車道「高知JCT」経由、東部自動車道「高知南IC」から約15分
高知龍馬空港から東部自動車道経由で約25分※道路案内板の「五台山」または、「牧野植物園」「竹林寺」を目指してお越しください。
※ナビをご利用の場合は目的地を「竹林寺」に設定してください。ナビによっては「牧野植物園」にすると到着する前に案内が終了する場合がございます。
航空機ご利用の場合
高知龍馬空港 -(空港連絡バス) - はりまや橋 or JR高知駅 -(MY遊バス) - 牧野植物園正門前
高知龍馬空港 -(空港連絡バス) - 知寄町 -(タクシー10分) - 牧野植物園
牧野博士の新休日
牧野博士を育んだ高知の自然や植物を広くお楽しみいただく、高知県を中心とした観光博覧会(2024年3月31日まで)。高知県立牧野植物園だけでなく、
博士の生まれ故郷である佐川町などゆかりの場所や、四季折々の植物が楽しめる場所など、高知県をより深く楽しめる企画多数。
Staff Credit
Creative director/Photographer 菅原一剛
Producer 植田佳代
Art Directer 中川健一
Copywriter 中山理恵
Music 松井庸平
Movie Director 猪俣由貴
MAKINO RADIO
MC/Director 松井庸平
Director 古閑優樹
Web Designer 菅井留美
Frontend Engineer 坂本一馬
Coordinator 前田彩子、衛守恵
Assistant Photographer 池田光徳
Printer 久保元幸
PR 宮本哲明、清野真紀
制作・運営協力
有限会社ストロベリーピクチャーズ、株式会社QANDO
企画
MAKINO Botanical Art Project